今年の1月20日は大寒です。「大寒」は一年の二十四節気のうち最後の節気であり、この日は同時に旧暦の12月8日「臘八節」(ろうはちせつ)でもあります。旧暦の12月は「臘月」といい、一番寒い農閑期にあたり、祝日がもっとも多い月です。一般的には「春節」は臘月8日の臘八節、一部地方では臘月23日の竈王節(そうおうせつ)<台所の神様を祀ること>から旧暦正月15日の元宵節(げんしょうせつ)<旧暦新年最初の満月の日に餡入りの団子を食べること>までの期間を指します。臘月8日の「臘八節」はその年の豊作を祝い、春節を迎える準備をする日です。中国では「臘八を過ぎたら、春節になる」ということわざもあります。この日から年越しに向け、準備を始めます。
臘八節の起源は中国古来の伝承で、12月に「臘祭」を祝い、人々は野獣を狩猟して、先祖に供えて祈りを捧げて、その年の豊作を感謝するという意味です。漢(紀元前206-西暦220年)の時代は冬至から数えて3番目の「戊日」を「臘日」としていましたが、南北朝(439-589年)の時代に12月8日になり、正式に「臘八節」として祝われるようになりました。その後、中国で徐々に国民的な祭りになり、現在でも旧暦臘月8日に五穀豊穣を祝い、まもなく迎える春節の準備をする日であります。
臘八節には多種多様な風習がありますが、「臘八粥(ろうはちがゆ)」というお粥を食べるのが代表的なものです。このお粥の作り方は、様々な穀物を混ぜて煮るというとてもシンプルな作り方です。中国各地では、臘八粥の食材はそれぞれ違いますが、主に小豆、緑豆、蓮の実、粟、もち米、トウモロコシ、高粱、インゲンマメなど、8種類の穀類を入れて甘い味を付けた粥です。現在でもこの頃になるとスーパーで臘八粥の材料が売られています。
ほかには、「臘八蒜(ろうはちさん)」を作る風習もあります。臘八蒜はニンニクをきれいに洗って、密封ビンに黒酢で漬けて作ります。そして瓶を開けずにそのまま日陰で涼しい場所で保存したら、ニンニク全体が鮮やかな緑色になり、水餃子を食べる時のお新香になります。また、臘八蒜を漬けた黒酢は「臘八醋(ろうはちす)」と呼ばれ、旧暦の大晦日に水餃子につけて食べる習わしがあります。日本の方は「緑色のニンニクって食欲が失せる」と思ってしまうかもしれませんが、実はこれは水餃子を食べる時欠かせない味で、酢の中にニンニクの味が移り、ニンニクは酸っぱい香りが漂って、水餃子と一緒に食べるとすごくおいしいです。
また、中国仏教の伝承では、お釈迦様が苦しい断食の修業中にスジャータという女性が食べさせてくれた粥で元気が出て、悟りに至ったのがこの日だという説もあります。そのため、「仏成道節(ぶつじょうどうせつ)」とも呼ばれています。臘八節は中国で仏教の盛大な祭りでもあります。
毎年この日になると、北京では多くのお寺もお粥の無料配布イベントを行い、境内で参拝者が幸福を祈ったり、僧侶の読経を聴いたりして、このような伝統行事を行うことで「臘八」という文化を若い世代に伝えます。例えば、北京では最大のチベット仏教のお寺として有名な観光スポットである「雍和宮(ようわきゅう)」、1700年の歴史を持つ北京の西にある「潭柘寺(たんしゃじ)」などでは、毎年臘八節になると無料のお粥を配布することがあり、多くの市民や観光客が参加し、お粥を食べ、お寺で参拝します。
しかし、残念ですが今年は新型コロナウィルス感染拡大防止対策のために、「雍和宮」と「潭柘寺」の臘八粥配布イベントはキャンセルされました。
「臘八節」がやってくると春節の幕を開けたことも意味し、年末の色が日に日に濃くなっていきます。臘月8日から布団を干し、カーテンを洗い、饅頭(中国式蒸しパン)や肉・魚の団子を作り、台所の神を祀り、家を掃除し、年画(吉祥を表す絵)や爆竹を買い、対聯(対句を書いた掛け物)を貼り、ちょうちんをかけ、各世帯には新しい年に向け、町中に楽しい雰囲気が溢れています。まもなく中国の大晦日と春節を迎えますよ。(邢)