中国レポート No.116 2026年9月

世界的な温暖化の為か、東京もそうだが、北京の夏は年々気温が高くなっている。7,8月は連日36度以上の日が続いた。ただ大陸性気候というのは、雨が降ると急に気温が下がる時がある。近年は立秋が過ぎても一向に秋の気配が感じられない。むしろ残暑が一段と厳しくなる。中国では初秋の厳しい残暑の事を「秋老虎」という。もちろん民間に伝わる言い方で、正式な気象用語ではない。猛々しい虎のような暑さという意味だ。今年も「秋老虎」は厳しかったが、ここに来てやっと秋の気配が濃くなった。因みに「立秋」は24節気で秋の始まりを表す日で、今年は8月6日だった。「秋分」は太陽の位置によって決まる。太陽が黄経180度に達する日で、昼と夜がほぼ同じ長さになる頃を示す。今年は9月23日だった。もちろん日本、中国とも同じだが、厳密に言えば両国間には時差が1時間あるので、時間的にはややずれる。日本では秋分の日は祝日で休みだが、中国では祝日とはなっていない。

北京の秋告げ花はコスモス(コスモス、キバナコスモス)、百日草、宿根草(エキナセア、アスター、ヒューケラ、ヤブラン、サルビア)、早咲きの菊(大菊、小菊、多頭菊)などだ。秋の花見は市の中心にある「北海公園」、市の北部にある「オリンピック公園」が有名だが、中国は2008年の北京オリンピックを迎える頃から「美しい北京」を目指し、至る所に花壇を設置した。政府は、人々が花を植える事を奨励したので、北京には一気に花が増えた。

さて、中国は依然として「内憂外患」状態だ。いや、国際的に一国主義が蔓延り、政治、経済、安全保障面での分断状態が続くと、中国だけでなく、どの国も経済や安保が不安定になり、内憂外患に陥り易い。中国にとって、やはり何と言っても米中対立が鬱陶しい。中国の場合共産党の統治が安定する条件は、経済が安定的、持続的に発展し、人々の生活が安定、向上することである。生活の安定向上が確保されれば、いろいろな不満があっても、それが爆発する事はない。多くの庶民にとって生活が第1、生活が少しずつでも良くなれば、社会主義であっても、資本主義であっても良いのだ。もう1つは、中国を取り巻く国際環境が安定し、平和であれば余計な心配をしなくて済む。何と言ってもここ30、40年間の改革開放で得た豊かさは失いたくないというのが国民の本心なのだ。万一戦争でも起きれば、この豊かさは一瞬で失う事になりかねないのである。その意味で、多くの中国人は対米関係、そして周辺諸国との関係が正常で安定する事を望んでいる。世界は複雑だが、ある友人が言っていた。「世界という舞台の上で、中国と米国は主要な演技者だ。中米関係は『主要な矛盾』であり、その他の中欧、中日を含む、中国と外国の矛盾は『副次的な矛盾』である。主要矛盾が緩和すれば、副次的な矛盾も緩和される」。この友人は「去る5月のトランプ米大統領の訪中はほぼ成功し、中米関係は緩和基調である」と言う。また友人は「今回の習近平訪米で驚いたのは、トランプ夫妻が慣例を破り、空港まで出向き、習近平夫妻を迎えた事だ。これは習近平のメンツをくすぐった。米国は中国を対等な相手として認めた」。このことは習近平だけでなく、多くの中国人を気分良くさせた。「米国と対等になる」これが毛沢東以来、多くの中国人の念願であったからだ。調べてみると、米国大統領が外国の国賓を空港まで出迎えたのは1962年以来64年ぶりである。通常は大統領の代理が空港で迎え、大統領はホワイトハウスで出迎える。友人は「習近平はさぞ気持ちが良かっただろうし、これに応えなければならない」と言う。さらに友人は「この中米関係の緩和に世界は敏感に反応するだろう。中日関係は、中米関係抜きにしては語れない。中米関係が変われば、中日関係も変わらざるを得ない」と言う。実際はそんな単純なものではない。米中のライバル関係は長期に渡って続くだろう。しかし、厳しい制裁合戦のような事が起きれば、双方が傷つく。お互いにもう耐えられなくなってきた面があるのだろう。まして戦争などは双方とも絶対に避けなければならない。両国とも核保有国なのである。「ストックホルム国際平和研究所」(SIPRI)によると、核保有国の弾頭保有数は米国が約5200発、中国は約600発だ。万一核戦争が始まれば、この数字はあまり関係ない。北京、上海は消滅するだろうが、ワシントン、ニューヨークもただでは済まない。核戦争に勝者はないのだ。だから現実的には、核保有国同士は戦争出来ないのだ。米中も例外ではない。

残念ながら日中関係は「国交回復以来最悪」と言われ、メディアでは日本批判が目立つが、一般市民の間で反日機運が盛り上がっているわけではない。かつて2024年9月に北京でオープンした日本の回転すし屋は当時連日満員で、土日祭日には10時間以上待ちが普通だった。そこまでではないにしても、今でも日本の回転すし屋は人気だ。海外旅行も、政府が訪日自粛を呼びかけているが、やはり訪問地、観光地として日本の人気は根強い。これは米国に対しても同じで、米中対立がいくらエスカレートしても、北京のスタバやKFC、マックは若者中心に多くの客が入り繁盛している。かつては日中、米中の政治関係が悪くなると、庶民の間で反日、反米感情が盛り上がり、デモが起きたり、日貨、米貨排斥運動が起きたりしたが、今はずい分変わった。「良いものは良い、悪いものは悪い」と非常に冷静だ。私が乗った北京のタクシードライバーが言っていた。「中日の争いは政府の問題で、われわれ庶民には関係ない。国民同士は仲良くすべきだ」。

日中関係について言えば、時々北京に行っている筆者にとって心配ごとがある。それは相互理解の著しい不足だ。最近北京に行くと、友人の紹介で日本に留学している学生の親御さんが訪ねてくる事がある。相談に乗って欲しいと言うのだ。会うと必ず聞かれるのは、子供が心配だ、中国人にとって日本は危険だと聞くが、東京の大学に留学している子供は大丈夫だろうか、呼び返した方が良いのかと意見を求められる。一人っ子世代なので余計心配なのだ。全く同じ事が日本でもある。日本にいると、北京に留学している日本人留学生の親御さんが良く訪ねてくる。同じく相談に乗って欲しいと言う。中国人の多くは反日的だと言うが、子供は安全だろうか、呼び返した方が良いのだろうか、毎日心配で眠れないと言う。私は北京では日本人留学生と、東京では中国人留学生と接する機会があるが、イジメに遭ったり、迫害されたと言う話は聞いたことがない。念のために非常勤講師として4年務めた慶応大学や社会人教育の講師を務めた事のある早稲田大学の中国人留学生、また北京では母校の北京大学、客員教授をしている中国傳媒大学の日本人留学生に聞いてみた。皆異口同音に「そんなことはありません。勉学上、生活上、危険を感じた事はない」と笑って答える。確かに世論調査を見ると、日本人の対中感情、中国人の対日感情は良くない。それでも普通の日本人、中国人が、学校や街中で嫌がらせをされ、迫害されるような事はないと言える。もちろん100%安全な国は存在しないので、親御さんたちに子供さんたちの安全を100%保証する事は出来ないが、世界中を見ても、東京や北京は「非常に治安が良い」部類に入るとは伝えている。特に今の中国政府は、優先順位として経済的発展より「社会の安定、安全」を上位に置いていて、治安維持には格別注意を払っている。

日本と中国は一衣帯水の隣国であり、通信手段の飛躍的発展もあり、行き来は自由になり、相手国の情報は何時でも手に入る。それでも相互理解はこの程度なのはなぜなのか、考えさせられてしまう。その1つは最近飛躍的に普及しているSNSだろう。通信手段の飛躍的発展を利用した「表現の自由」の悪用である。偽情報、挑発的情報の拡散はなかなか止められない。日中双方ともSNSによる相手国に対する誹謗中傷的「情報」は多い。このSNSの偽情報、刺激的挑発的情報が日中間の離間を産み出す1つの要因だ。SNSは個人発信なので、多くの発信者の責任意識は薄弱で罰則規定もない。世論調査結果やSNSの影響もあり、日中とも相手国に対する留学生派遣は減っている。中国では「治安」を理由に日本留学自粛を呼び掛けている。お互いに観光客も減ってしまった。これは実に嘆かわしい事である。国交正常化以降、日本人の中国旅行は一気に増えた。その結果中国への理解が進んだ。訪日客データによると、日本の対中国渡航者数のピークは2019年で、約269万人。一方、改革開放で豊かになった中国人の海外旅行が爆発的に増え、日本にも多くの観光客がやってくるようになった。中国人の訪日観光客数のピークはやはり2019年で、その数は約959万人に上った。日本人、中国人観光客の多くは、相手国に対するイメージが変わったと言っている。かつての戦争の事があり、中国人の中には依然として対日不信が強かった。それが実際に日本に行き、日本を見て、日本人と接する事で、悪いイメージが良いイメージに変わった人が多かった。日本人観光客の多くは「実際に中国に行ってみると、メディアで報道されているのとずい分違う」と言う。まさに「百聞は一見に如かず」、接触する事は相互理解にとって非常に重要なのだ。筆者は日中関係の正常化を望む1人として、もっと多くの日本の若者が中国に留学して欲しいし、もっと多くの日本人観光客が中国に行って欲しいと思う。またもっと多くの中国の若者が日本に留学して欲しいし、もっと多くの中国人観光客が日本に来て欲しいと思う。そのために両国の政府は留学がし易い、観光客が訪れ易い環境を整備して欲しいと願う。それが相互理解を促進する。相互理解は「和」と「共存」に通じる。「和則両利、闘則俱傷」(和すれば共に利あり、争えば共に傷つく)。

経済面でも日本と中国は既に切っても切れない相互依存関係が構築されている。日本の貿易総額における対中国貿易の割合は約20.1%で、18年間1位を保っている。中国の対日貿易は同5.4%でASEAN、EU、米国に次ぐ第4位だ。この関係を維持、発展させるために、お互いに相手国の正しい経済状況を把握する努力が必要だ。前回のレポートでも触れたが、中国経済が大きな困難に直面しているのは事実だ。不動産市場は依然と低迷し、消費は思うように上がらない。地方政府の膨大な債務処理にはまだ時間がかかるだろう。失業率、特に若年(16歳―24歳)失業率は一向に改善しないどころか、直近3ヶ月の数字は、6月14.9%、7月17.9%、8月18.9%と悪化気味である。一方で、輸出とAI、通信、ハイテク製造部門は非常に好調だ。中国経済は、一概に良いとか悪いでは理解できないのだ。上半期(1月―6月)のGDP成長率は対前年同期比+4.7で、かろうじて政府の目標である「通年の成長率+4.5%から+5.0%」をクリアしたが、発展途上の中国としてはやはり低い。その一方で上半期の全国1人当たりの可処分所得は同+5.2%だった。「格差」の問題はあるが、国民所得は伸びているのだ。日本では、中国経済は今にも崩壊する言う人がいるが、そんなことはない。

最近の中国経済を見ると、非常に皮肉な現象が起きている。それは「悪い状況」は国内部分で、消費の低迷などが原因だ。一方で「良い状況」は、輸出と中国製品の海外販売で、中国経済の世界経済における存在感は増している。例を挙げれば、消費の動向を反映すると言われる新車販売だが、直近の8月は(輸出を含む)対前年同月比-5%、10か月連続でマイナスだった。1-8月では同-4%だった。しかし1-8月の内訳を見ると、国内販売は同-22%、輸出は同+67%で、特に新エネ車は同2.3倍と爆増、ガソリン車も同+25%だった。ここのところ海外販売は絶好調ながら、国内販売では苦労しているEVの旗手BYDは8月の新エネ車販売台数は同+18%、その内EVは同+28%だった。中国は2009年以来、一貫して新車販売マーケット世界1を維持してきた。これは変わらないが、内容は変わってきた。国内マーケットは拡大し続けてきたが、ここに来て急ブレーキがかかっている。一方で新車の輸出は右肩上がりだ。つまり新車販売分野でも「内需型」成長に陰りが生じ、「外需型」成長に大きく傾いてきたのである。中国の経済成長の過程を見ると、初期の段階では所得の上昇が旺盛な購買意欲を引き出し、消費が爆発した。典型的な内需型成長である。ところがだんだんと消費が落ち着き、代わって輸出と外資導入が成長の主要なエンジンとなった。内需型成長から外需型成長への転換である。しかし中国の経済が発展し、人々の生活が豊かになるにつれて、人件費の高騰が起きた。外資はコストのより低いところに移る。中国がこの「中心国のワナ」(発展途上国には人件費をはじめ、コストの安さという優位性があり、先進国には経済運営や科学技術の発展という優位性がある。しかし中進国になると往々にしてこれら両方の優位性が無くなり、経済発展は大きな壁にぶつかる)から逃れる事が出来たのは、中国が単なるコストの安い生産基地から、巨大なマーケットに変貌したからである。外需型成長は、政治、経済の国際情勢の影響を受けやすく、土台が不安定である。特に一国主義が蔓延り、国際分業にヒビが入ると、外需型成長の国は大きなマイナス影響を受ける可能性がある。中国はその典型だった。そこで中国は成長構造の転換、つまり内需を掘り起こし、外需型成長を内需型に戻す努力を始めた。中国は内需の掘り起こしと、新型産業の育成に努めている最中なのである。EVはその花形だった。つまりここのところの新車販売を見ると、中国が目指す内需型成長への転換とは逆方向に動いているのだ。とどのつまり内需が弱いと言う事だ。しかし逆に言えば、内需が上向いて、新型産業が順調に育ってくれば、中国は新たなステージでの成長が出来るという事だ。

中国は未来の「新たな質の成長」に向けて、しっかりと基礎投資、基礎建設も行っている。主な内容は「6つのネットワーク」の建設、改造、ハイテク化だ。水道網ネットワーク、新型電力ネットワーク、演算能力ネットワーク、次世代通信ネットワーク、都市部地下パイプライン、新型物流ネットワークである。生成AI、データセンター、半導体、通信、ロボットなどの分野は膨大な電力を必要としている。つい10年ほど前まで、中国は電力が成長について行けず、慢性的な電力不足に悩んでいた。これは中国に進出した外資の悩みの1つだった。中国を知る人でも中国イコール電力不足という先入観があり、「今でも停電はあるの」とよく聞かれる。ところが多くの人が知らないうちに中国の電力網は進化を遂げ、革命的に変わりつつある。これまで中国の産業分布は、東北地区は目下改造中の古い工業地帯、東部地区は新工業、商業、貿易の中心地域、南部地区は水資源が豊富な農業地帯、それに比べ西部地区には地下資源があり、畜産が盛んだが、人の住み難い広大な砂漠や高地が広がる「不毛の地」が多いというイメージが強かった。特に内モンゴル自治区、新疆ウイグル自治区、寧夏回族自治区、チベット自治区、青海省などは面積に比べ人口が少ないのは、人が住むのに適しない地域が多いからである。西部地区は「5自治区」(新疆ウイグル、チベット、寧夏回族、広西チワン、内モンゴル)、「6省」(四川、雲南、貴州、陝西、甘粛、青海)、「1直轄市」(重慶)から成る広大な地域だ。筆者は内モンゴル、青海省や新疆ウイグル自治区を旅した事があるが、雪山、高地、砂漠が延々と広がり、人はまばらだった。特に新疆ウイグル自治区の南部は「南疆」と呼ばれ、「ゴビタン」(砂、土、小石から成る砂漠)が地平線まで広がっていた。夏には強烈な太陽が照り付け、気温は40度以上にまで上がり、地表温度は70度近くまで上昇する。猛烈な風は無数の石を巻き上げ、時には人や家畜の命を奪うと言われていた。冬には気温が零下20度以下まで下がる。カラカラに乾ききった黄色い大地、炎暑と極寒、暴風。とても人が住める環境ではないと思った。ただ水資源がないわけではないのだ。雪山から流れ出た雪解け水は平地に流れると伏流水となって地下を流れるようになる。その伏流水を利用して村落を作ったのが、砂漠に点々と存在する「オアシス」である。中国には知恵者が多い。そのような劣悪な地形環境、気象条件を逆に利用して打ち出したのが「西電東送」計画だ。西部の地形と気象条件を利用し発電を行い、それを各種産業が集中し、人口密度が高く、電力の消費が最も多い東部地区に送るという計画だ。すでに計画ではなく、実際に稼働している。

今、西部の砂漠、高原には夥しい量の風力発電設備、太陽光発電設備、太陽集熱発電設備が並び、パネルが砂漠を覆い隠している。その間に鉄塔が林立し、上空を高圧送電線が砂漠を走り、丘を越え、縦横に延びている。「不毛の砂漠」の様相は一変している。ある日本の専門家が、西部地区の砂漠にある再エネ発電設備群を見学して驚愕したと言う。「いつこんなものを作ったのだ」と。ここで発電した電力を東部に送るのだ。こうして貧しい西部は潤い、豊かな東部は電力不足を解消し、産業も生活者も助かる。

砂漠の変化はそれで終わらない。砂漠の真ん中に幾つもの巨大な養魚池が並んでいる。内モンゴルのクブチ砂漠、新疆ウイグル自治区のタクラマカン砂漠にある且末県、和田県などである。雪解け水だけでは足りないので、大規模な工事を経て、黄河水系の水を砂漠に引いてきて、巨大な養魚施設を作り、太陽光発電の豊富な電力を利用した「生態智能恒温循環システム」で水温を20度から30度に保ち、魚や甲殻類の養殖を行っている。驚くのはティラピア、鱒、鯉、ウナギ、サーモンなどの淡水魚だけでなく、スズキ、ハタ、ロブスター、エビ、カニなどの海水魚類や甲殻類まで養殖している事だ。砂漠の塩アルカリ水を海水に還元する技術が使われている。このような事業には「良い副作用的生態系変化」があると言う。それは水を引いて来る事により、貯水池や湿地帯が出来、植物が蘇り、多数の水鳥や小動物が生息するようになった事だ。人々の生活空間も広がった。

今年から始まった「第15次5ヵ年計画」をよく読むと、エネルギー安全保障の下、「新型エネルギーシステム」の構築が強調され、内容として、AIとエネルギーシステムの結合、新型電力網の構築と整備、電力の貯蔵能力の向上、水素・核融合の利用などが含まれるとしている。その中でも「新型電力網」の建設は重要かつ緊急課題だと言われる。関係者によると、そのために政府は5兆元規模の固定資産投資を行うだろうという。中国の電力網整備について言えば、省・地域間の特別高圧送電能力は、「第13次5ヵ年計画」(2016年―2020年)が2億2700万kw、「第14次5ヵ年計画」(2021年―2025年)が3億4000万kwだったが、「第15次5ヵ年計画」(2026年―2030年)では9億kwまで増強する計画だ。この新型エネルギーシステムを15次5ヵ年計画の年度内に「基本的に完成」させるという。この過程で中国は、国内の電力システムの整備と共に、発電(ハードとソフト)、再生可能エネ設備、高機能材料、製造装置、制御技術、精密機器部品などの輸出にも力を入れるという。2025年時点で、太陽光パネルの世界シェアで中国は既に80%以上を占め、新規風力発電導入容量の78%を占めている。

米国を含め、ここまで新エネルギーの構築に力を入れている国はない。このような目立たない基礎研究、基礎投資、基礎建設に中国は全力を挙げて取り組んでいる。最近中国のハイテク関連で目立ち、話題になるのはAIであり、ロボットであり、EVであろう。しかし派手さはないが、基礎の部分で中国はやるべきことはしっかりとやっている。もしこれが成功すれば、発電、新エネルギー、省エネ、新エネ・AIの結合などの分野で、中国は世界のエネルギー構造とエネルギー秩序を変えるかもしれない。要は、こういう面もしっかり見ないと、いまの複雑な中国経済は全面的に、正しく理解する事は出来ないという事だ。日本は往々にして主に中国の「マイナス部分」を見る嫌いがある。それに比べ欧米やASEAN諸国は、中国経済の「プラス部分」も見て、経済面での更なる対中協力を模索している。様々な矛盾があるにもかかわらず、米国、EUやインド、豪加、ASEAN諸国の首脳が北京を度々訪れ対話を維持しているのはそのためである。日本だけ首脳間の対話が皆無というのは、実に嘆かわしいし、歯がゆい思いだ。1日も早く、双方の努力で日中関係が正常化して欲しいと願う。(止)

西園寺一晃 2026年9月26日