かつてデジカメで撮影した料理写真と日記形式のブログで店舗情報を紹介していた時代から、SNSの台頭を経て、グルメ発信は「グルメインフルエンサー」によるエンターテインメントへと劇的に変化しました。現在はショート動画からライブ配信へと時代を迎え、料理の湯気や肉の焼ける音、とろけるチーズの質感といった動的な魅力が不可欠となっています。ただ美味しいものを紹介するアーカイブから、視聴者と一緒にその場の臨場感をリアルタイムで楽しむ「タイパ」(タイムパフォーマンス)重視のスタイルが主流です。
しかし、料理を綺麗に映すだけのコンテンツはすでに飽和しています。現在ユーザーの目を引きつけるには、一瞬で脳を刺激する演出とストーリー性の掛け合わせが必須です。スマートフォンの手ブレを防ぐ三脚固定、斜め45度のアングルで立体感を出すこと、さらに食感を擬似体験させる音響効果(ASMR=エーエスエムアール。咀嚼音・焼ける音などを通じて臨場感を高める音響効果)といった技術は基本にすぎません。スクロールを止めさせるために、動画の冒頭1秒で「凄まじいデカ盛りのドアップ」などのフックを配置する手法や、「ここマジで秘密にしたいんだけど…」と語りかけるナレーション、「〇〇元握りしめて行く食べ歩き」といった疑似デート風の構成で、視聴者に体験を追体験させることがバズる鉄則となっています。
この華やかな世界の裏側には、影響力に応じたシビアな収益構造(ピラミッド)が存在します。
トップ層は、コアなファンによるライブ投げ銭や月額サブスク、オフ会などの「ファン経済」を主軸に多額の収益を上げています。プラットフォーム側に約50~70%の手数料が引かれる仕組みではありますが、圧倒的なファン数でそれをカバーし、さらに中抜きのない高単価な企業への直接PR案件やオリジナル商品の販売へとビジネスを展開します。
一方、中堅層は新店などのプロモーション報酬を得つつ、配信で紹介したお取り寄せグルメの注文金額から数%〜数十%を紹介料として受け取るアフィリエイトで手堅く稼ぐのが特徴です。
そして最も分母の大きい初心者や非トップ層の実態は、現金報酬のない「現物支給型の経済」です。店舗側から「発信を条件に当日の食事代を無料にする」という食事の無料サービスが中心となります。食費を浮かせながら実績を作れるため新規参入者が絶えませんが、移動費や拘束時間を考慮すると、仕事としては赤字になりやすいという側面を持っています。(ハン)
