北京の交通事情  走行制限とナンバープレート抽選

中国の首都である北京。2016年まで全国渋滞都市ランキングでトップワンの座を占め続けていたため、いつの間にか「首都」を「首堵」(漢字の発音が「首都」と同じ、交通渋滞全国一という意味)とふざけて称されるようになりました。北京の運転手にとって一番困る質問が「目的地までかかる時間」だそうです。

自動車は人々の生活に便利をもたらすと同時に、保有台数が年々速いテンポで増加することに伴い、深刻な渋滞問題と自動車の排気ガスによる大気汚染も引き起こしています。それでは、これらの問題を改善するため、北京市政府が実施してきた措置を整理しましょう。

まず、北京市政府は2008年北京オリンピック期間中、北京市内において、ナンバープレートの末尾数字が奇数の車両は奇数日、偶数の車両は偶数日での運転に制限する交通制限政策を実施しました。これをきっかけに、オリンピックが終わった後も、ナンバープレートの末尾数字による交通規制政策を継続して実施し、北京の車両(ナンバープレートは「京」から始まる)に対し、月曜日から金曜日までの5日間(7:00~20:00)、毎日2つの数字の車両の第5環状道路以内(第5環状道路含まず)の走行を禁止しました。数字と曜日の組み合わせは13週間ごとに変更されます。2013年4月からは北京市行政区域内の政府機関などの公用車の使用が週に一日(0時-24時)停止されています。

また、北京市交通委員会の統計データによると、2007年以前、年間15万~20万台だった北京の自動車増加台数は2008年に38万台、2009年には51万台に達し、2010年末、北京の自動車保有台数は470万台に達したとのことです。そこで、北京市は自動車保有台数の急増にブレーキをかける措置を2011年1月より実施し始めました。この措置で北京市は条件を満たす国家機関、企業、社会団体などの法人及び個人に対し、抽選で自動車(普通乗用車を指す)ナンバープレートを無償で発給することにしました。あわせて2011年の自動車新規登録台数を24万台(個人車両が88%、タクシー等営業車両が2%、その他10%)、月当り2万台に制限することを決定しました。

具体的な方法として、自動車の購入を希望する個人や国家機関、法人はまず北京市乗用車指標調整管理情報システムに申請書を提出して申請番号を取得、申請番号が有効と審査された後、抽選に参加できる資格を有し、当たるまで何回でも参加できます。北京市乗用車指標調整管理弁公室(北京市乗用車のナンバープレートの割り当てを管理する機構)の発表によると、2011年1月26日に行われた第1期抽選会は、18万7420人の個人申請者が1万7600台分のナンバープレートを競ったとのことです(当選率は約11%)。

ナンバープレートの抽選は2013年12月までは月に一回行われてきましたが、北京の自動車保有台数を2017年末までに600万台以内に抑えるため、2014年からは二カ月に一回行われるようになり、普通自動車のナンバープレートの発給枚数は13万に減らされてしまいました。一方、新エネルギー車(純電動自動車を指す)の使用を普及させるため、北京市は2014年、2万台分の新エネルギー車のナンバープレートを抽選せず申請者に発給するほか、新エネルギー車の購入者に補助金を出す措置を実施しました。しかし、当時、充電ポットの整備が進んでいなかったため、新エネルギー車の購入者数はあまり多くありませんでした。

それ以降、普通自動車のナンバープレートの発給枚数がどんどん減らされ、2018年に4万台(内個人向け3万8000台)分しか発給されないことになりました。しかし、北京市乗用車指標調整管理弁公室の発表によると、2018年6月25日時点で、審査を通過した自動車の個人申請者数は既に280万8047人に達したとのこと。当選率が過去最低を更新する可能性が高いでしょう。また、北京市が2018年4月9日より純電動自動車を平日ラッシュの走行制限の対象としないことを発表したため、新エネルギー車の個人申請者数は個人向けの5万4000台という指標をはるかに超え、28万5560人にのぼりました。新たな個人申請者がナンバープレートを取得できるのは少なくとも5年後ということです。筆者は2011年8月から北京市自動車ナンバープレート抽選会に参加していますが、7年が経った今も当選できずにいます。本当に宝くじより当たらないといっても過言ではありません。北京市自動車ナンバープレート抽選に関する指標と個人申請者数の推移は下記の表を見れば一目瞭然です。

北京市自動車ナンバープレート抽選に関する指標と個人申請者数の推移  データの出所:北京市乗用車指標調整管理情報システム

北京市自動車ナンバープレート抽選に関する指標と個人申請者数の推移
 データの出所:北京市乗用車指標調整管理情報システム

ナンバープレートの抽選制度が実施されてから、北京市の自動車伸び率は急激に低下しました。にもかかわらず、ラッシュ時の交通渋滞が著しく緩和されたことをあまり感じません。その原因は、北京の自動車ナンバープレートを取得できない北京在住の方々が他地域のナンバープレートの車両を購入し、北京の道路を走行しているためです。既に70万台の他地域の車両が長期的に北京で走行しているようです。この70万台の他地域の車両が北京の交通渋滞の緩和にマイナス効果をもたらしているため、厳しく管理しなければならないと指摘されます。(鞠)

北京にある他地域ナンバーの車両

北京にある他地域ナンバーの車両

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