2013-03-13 中国農業ビジネス ~中国で高品質な農作物を生産・販売する~

3月7日から9日まで、中国日本商会食品グループが実施する「青島市日系食品メーカー視察」に参加した。青島市は食品関係の日系企業が非常に多く、新潟市内企業である亀田製菓株式会社(本社新潟市江南区)も2003年に青島市に製造拠点として工場を設立し、現在は巨大市場中国での販路開拓に力を入れている。
中国で生産したものを日本で売るビジネスから、中国で生産したものを中国で売る、或いはミャンマーやカンボジアといった中国より人件費の安い国で生産したものをやはり中国で売るのが中国ビジネスの主流となってきている。
今回、視察先として訪問したのは山東省莱陽市(ライヨウ市)にあるアサヒビール、伊藤忠商事、住友化学が合弁で設立した農業会社「山東朝日緑源農業高新技術有限公司」(以下朝日緑源農業社)と「山東朝日緑源乳業有限公司」である。朝日緑源農業社は2006年に設立され、化学肥料に頼らない牛糞を用いた堆肥を利用することで地力を維持する「循環型農法」を実施している。乳牛を飼育しそこから得られる牛糞から堆肥を生産することで土壌を改良し、その良質な土壌から安心・安全でおいしい農作物、いちご、スイートコーン、ミニトマト等を生産する。そしてとうもろこしの茎などの副産物を再び乳牛の飼料として活用し、乳牛からおいしい牛乳を加工生産する。

いちご栽培ハウス。長くて向こう側にいる人が小さい・・・

いちご栽培ハウス。長くて向こう側にいる人が小さい・・・

上:レタス

上:レタス

下:紫キャベツ 無農薬,化学肥料不使用。作物に勢いがある。レタスはその場でちぎって試食。甘くてレタス特有の苦みがない。

下:紫キャベツ
無農薬,化学肥料不使用。作物に勢いがある。レタスはその場でちぎって試食。甘くてレタス特有の苦みがない。

乳牛から得られた牛乳は同じくアサヒビール、伊藤忠商事が合弁で設立した「山東朝日緑源乳業有限公司」が加工・販売しており、1リットルサイズで300円以上する高価な値段で売られているが、在中国の日本人だけでなく中国人富裕層も購入しており、食の安心・安全が注目されている中国で、日本の高度な農業技術やきめ細かい生産管理・品質管理により生産された農産物が高く評価されているのである。

広大な土地に広がる牛舎。1600頭の牛がのびのびしている。良質な乳が年間6150t搾乳される。

広大な土地に広がる牛舎。1600頭の牛がのびのびしている。良質な乳が年間6150t搾乳される。

朝日緑源ブランド牛乳「唯品純牛乳」。日本の高度な技術を導入した成分無調整の牛乳。1リットル300円以上と高価だがよく売れている。

朝日緑源ブランド牛乳「唯品純牛乳」。日本の高度な技術を導入した成分無調整の牛乳。1リットル300円以上と高価だがよく売れている。

農作物に限らず、中国で食品を生産して販売する場合、様々な問題が発生する。まず、生産に必要な資材や設備がなかなか安定的に確保できないことだ。そしてせっかく品質の良いおいしい農産物や食品を生産しても、その品質・鮮度を保った状態で消費者に届けられるだけのコールドチェーンや販売チャネルが確立されていないことだ。この問題には多くの日系食品メーカーが直面する。同社の場合、出資者である住友化学が資材調達の支援を行い、伊藤忠商事がサプライチェーン確立のサポートをしている。安心・安全でおいしい農作物の栽培から物流・販売まで一貫したフードシステムを構築しているのが同社の強みだ。また、このような日本式の高度な農業技術や生産管理を取り入れた農業を現地で行うにあたり、当然現地農家への技術指導、次世代の中国人農業指導者を育成しなければならず、同社は中国農業の発展そのものにも寄与していると言えるだろう。
日本で生産されたMade in Japanの農産物は中国で非常に付加価値が高いが、残念ながら中国政府は日本から輸入できる農産物はりんご、梨、コメだけに限定している。自国の農業を保護するためだ。しかし、こうした日本式の農業技術を取り入れた農産物、Made in JapanではなくMade by Japanの農産物を生産していくことに今後大きなチャンスがあるのではないだろうか。自動車や電気製品などはすでにMade by Japanが当たり前となっている。いずれ中国の農産物のうち、ブランド品とされるものが現地生産のMade by Japanとなる日もそう遠くないかもしれない。(笠原)