2013-01-30 北京市の大気汚染

1月10日頃から北京市の大気汚染が深刻な状況で、ひどい時は数百メートル先の高層ビルが全く見えない日もあります。それでも先週は青空がのぞいた日が数日ありましたが、この27日からまた再び真っ白な日が続いています。
今年の北京の冬は例年より風が吹く日が少なく、自動車の排ガスや工場から排出されるばい煙が大気と一緒に滞留してしまっている状態です。中国政府は毎日「大気汚染指数」を公表し、大気汚染のレベルに応じて、屋外での長時間の激しい運動や外出を避けるように呼びかけています。また、外出時にはマスクを着用し、屋内においても空気清浄機を設置し、こまめにフィルターを交換するなどの対策がとられています。

<窓から同じ場所を臨む 於北京>

通常は青空が広がる北京の冬(1月2日 撮影)

通常は青空が広がる北京の冬(1月2日 撮影)

大気汚染で真っ白な様子(1月12日 撮影)

大気汚染で真っ白な様子(1月12日 撮影)

中国は改革開放以来、急速に経済発展したため、先進国が100年、200年かけて経験した環境問題をわずか30数年で一気に経験してしまっている状態です。中国共産党もこの11月に開かれた第18回中国共産党大会報告において、「環境生態文明建設を突出して重要なものと位置づけ、経済、政治、文化、社会等各分野における全ての過程との融合を図り、美しい中国の建設のために努力し、中華民族が永続的に発展していくことを実現する」と明言し、習近平をはじめとした新たな指導部も環境保護を重視する姿勢をとっています。また、第12次5か年計画ではGDP平均成長目標を7%とやや低めに設定し(第11次5か年計画は7.5%)、これまで追い求めてきた「量の発展」から、「小康社会」建設、「質の発展」へと経済発展パターンを転換する方針を改めて提示し、資源節約型・環境にやさしい社会の建設を目指すこととしました。
日本もかつて高度経済成長する中で環境汚染を経験し、政府・自治体・企業・国民が一体となって環境問題を解決してきたノウハウがあります。中国は特に、地方政府に環境分野を専門に勉強した人材が不足しており、執政能力に問題があると言われています。日本では地方自治体が環境行政をリードしてきた経験があり、地方自治体交流をとおし、中国の環境保護の実務を担う地方政府にノウハウを伝えることの意義は大きいのではないでしょうか。また、2011年12月に中国国務院が発表した「国家環境保護十二五計画」では、2011年から2015年までに社会全体で約3.4兆元の環境対策事業が計画されており、2012年6月に同じく国務院が発表した「十二五省エネ・環境保護産業発展計画」では、省エネ環境保護産業の総生産額の年平均成長率を15%以上とし、2015年の総生産額を4.5兆元とし、GDPに占める割合を約2%とするという目標を明らかにしています。今後の中国における「省エネ・環境産業」の成長を見込んでか、すでに北九州市は大連、天津、青島、北京と、滋賀県は湖南省と環境分野における協定を結び、官民一体となって日系企業の対中環境ビジネス進出支援を強化しています。(笠原)