12月1日から9日まで,中国北京市郊外の蟹島国際展覧センターでアニメ・マンガの見本市「2012国際動漫博覧会(ICAC北京2012)」が開催されました。同イベントは中国文化部,北京市人民政府,中国人民対外友好協会が主催,期間中の来場者数は8万人を超え,過去に北京で開催されたアニメ・マンガのイベントとしては最大規模の動員数となりました。イベント公式サイトなどによると,海外からはアメリカ,日本,フランス,韓国などからアニメ・マンガ関連の出版社30社余り,映像関係会社50社余りが出展したとのこと。日中関係の悪化などから,日本からの参加は若干規模が縮小されたものの,出版社やアニメ制作会社など22社が出展したとのこと。早速会場へ視察に行って来ました。
日本館では「ゴルゴ13」で有名な「さいとう・たかを複製原画展」,「手塚治虫複製原画展」,「EVA原画展」などが設けられており,個人的には子供の頃にテレビアニメなどで親しんだ手塚治虫の複製原画に興味を引かれましたが,「EVA原画展」の方が多くの来場者を引き付けていた様に感じました。特に「EVA原画展」では,原画の展示以外にもアニメの制作過程なども詳しく解説されており,多くの若者が熱心に見入っていました。中国の若者がアニメの製作過程を知る機会などなかなかないので,興味深かったのでしょう。また,展示以外にも会場ではアニメ映画や短編映画が上映され,アニメ・マンガのキャラクターグッズなども販売されていました。
中国の総人口13億人のうち,アニメ・マンガ市場の消費者は約5億人,市場は1兆5000億円と日本を超える規模だと言われています。しかし,中国は日本と比べアニメ・マンガは“子供のもの“というイメージがまだまだ強くあります。一方で子供の頃に「ドラゴンボール」などの日本のアニメ・マンガを見て育った層が現在成人しており,今後中国においてもアニメ・マンガのファン層が拡大していくことが期待されています。
中国は自国のアニメ・マンガ産業の振興という国策の関係で海外からのアニメ・マンガ作品の輸入を制限しており,輸入にあたっての審査も非常に厳しいようです。また,中国は日本と比べ,アニメ産業の商流が日本ほどに成熟していなく,例えば日本の場合まず最初にマンガ雑誌で作品の連載があり,それが単行本になり,人気作品はアニメ化・映画化され,その中でキャラクターグッズなどがヒットするという一連のアニメ・マンガビジネスのチャネルがありますが,中国の場合各ビジネスが単発的で散漫なようです。
日本のアニメ・マンガ市場は少子高齢化のため,他の市場同様,将来的に縮小していくことが予想されます。今後,日本は中国市場に日本製コンテンツをそのまま売り込むだけでなく,中国のマンガ家やアニメーター,製作会社と共同で,中国の国情や市場に合わせた作品を製作し,また同時に作品の配信,キャラクターグッズの販売といったアニメ産業のビジネスモデルや流通チャネルの構築までをも含めた形で日本のノウハウを売り込んでいくことが期待されます。(笠原)