人口出生率低下に伴う家族形態の変化・子育て事情

中国では、夫婦1組につき3人まで子供をもうけることを認める「三人っ子政策」を2021年9月1日より実施しましたが、政府が発表したデータによると、2021年の人口出生数は前年末48万人増加の1062万人、死亡者数は1014万人、人口の自然増加率はわずか0.034%だったということです。出生率の低下に伴い、労働力人口は減少の一途をたどり、中国の主な家族の形態も変わりつつあります。四世代が同じ家に暮らす「四世同堂」から一組の夫婦とその子どもからなる「核家族」へと変化し、今はさらに、一人暮らしの単身世帯や子供のいない夫婦のみの一世帯がメインになるようになっています。

「三人っ子政策」の実施は人口の出生率をすぐに引き上げると期待されましたが、今の段階では、著しい効果がでていないようです。それはなぜでしょうか。

最近、ある機関が発表した「2022年働くワーキングマザーの生活状況調査報告」によれば、子どもを産みたくない原因の一番目は「経済的負担」、次は「仕事が忙しすぎて、子どもの世話をする時間がない」、「子どもが生まれても面倒を見る人がいない」ということでした。

中国の女性の就職率は他国より高く、共働き世帯にとって、妻が稼いでくる給料も家庭収入の重要な部分です。特に都市部では、家庭支出に圧倒的な割合を占めるのは三つの山と言われ、住宅ローン、子供の養育・教育費、医療費です。ほとんどの女性は産休が終わって職場に復帰することを選びます。しかし、子どもを託す幼稚園の入園条件は原則として9月1日時点満3歳以上の子どもでなければならないため、それまで子供の面倒を見る人が必要です。特にコロナが発生してから、幼稚園、小中学は集団感染を防ぐため、休みになることがよくありました。つまり、3歳までの幼児だけではなく、低学年の小学生にとっても面倒を見る人が必要です。

以前は、子供を定年になった両親に託すのが一般的でしたが、近年、市場需要は単なる子守りから、専門的な知識と豊富な育児経験に移り変わっています。両親プラス経験豊富なベビーシッターに子供の面倒を見てもらうのが主なパターンになっています。さらに、もし双方の両親がすでに高齢になり、子供の面倒を見ることができなければ、ベビーシッターにすべてを託すほかありません。

大都市のベビーシッターは主に地方からの出稼ぎ労働者ですが、現在、需要が高まる中、大卒以上の高学歴、高技能を持ち、子供の教育を堪能、家事・料理が上手なベビーシッターが増えています。ベビーシッターの賃金も年々上がっています。北京では、年齢、経験、学歴、技能によって、ベビーシッターの月収は月26日間勤務で約7000~2万元です。住み込みベビーシッターの場合、雇い主は食事と寝場所を提供するだけでなく、祝休日勤務の場合、2倍さらに3倍の残業代を払わなければなりません。

「三人っ子政策」の実施と共に、産休の延長、育児休暇の付与、3歳以下幼児の世話のサービス費用を個人所得税の特別控除対象にする組み込み等関連措置も打ち出されました。特に託児施設の充実が期待されているようです。(キク)