中国の肥満問題と対策について

今年の全人代(全国人民代表大会)で、国家衛生健康委員会(日本の厚生労働省に相当)の雷海潮主任が、健康的なライフスタイルを広めるための「体重管理年」3カ年キャンペーン実施を発表し、大きな話題を呼びました。最近、中国でも青少年の肥満問題が深刻になってきていて、メディアが時々報道する「ぽっちゃりキッズ」の姿は、憂慮すべき現状を如実に示しています。成人の肥満率は、米国(41.9%)や英国(28%)といった先進諸国と比較すれば、依然として低い水準にあるものの、その増加率は欧米諸国の2~3倍に達しているとも懸念しています。

2024年に新華社通信とフードデリバリーのプラットフォームが共同で「労働者のフードデリバリー栄養に関する健康診断」を発表しました。その報告書によれば、北京、上海、広州といった大都市圏において、労働者向けにデリバリーされる食事の半数以上が、栄養学的に適切な水準を満たしていないとのことです。その要因として、注文される食事の多くが高炭水化物、過剰な油分や香辛料、あるいは肉類に偏っている点が挙げられています。

具体的には、北京における高炭水化物食品(ご飯、麺類、肉まん等)の注文が全体の20.3%、過剰な油分や香辛料を使用した食品(麻辣鍋、汁なし火鍋、串焼き等)の注文が17.0%、そしてフライドチキン、バーベキュー、ハンバーガーといった肉類中心の食品の注文が19.3%を占めています。

また、中国の慢性疾患プロジェクトの調査データによると、会社員の1日当たりの平均座位時間は9時間に達し、運動不足の状態にある者は全体の3分の1近くに及ぶといいます。北京にあるインターネット企業の従業員は、「深夜まで残業することが常態化しており、フードデリバリーに頼らざるを得ない状況である。運動する時間を確保することは極めて困難である」と率直に語っています。

肥満、そしてそれに起因する数々の疾病は、個人のみならず家族の負担を増大させるだけでなく、国家の健康保険基金の支出を増加させ、最終的には国民全体の負担となります。

こうした状況を鑑み、食品業界では「三減」(減塩、減油、減糖)基準を遵守し、より健康的な食品の開発を推進するよう呼びかけられています。また、多くの省(日本の県に相当)が「体重管理」プログラムの導入に積極的に取り組んでおり、例えば、河南省が発表した実施プログラムでは、「生徒に対し、学校の内外を問わず、毎日1時間の運動時間を保証すること。学校の敷地内およびその周辺500メートル以内においては、塩分、糖分、脂肪分の多い食品の販売を禁止すること」が明記されています。(ハン)