中国レポート No.115 2026年7月

中国は7月15日(農歴6月2日)に「伏」の時期に入った(入伏)。8月23日(農歴7月11日)の「出伏」までの40日間が最も暑い時期と言われる。「伏」は猛暑の時期という意味だ。中国古代の暦である「干支」により、毎年「伏」の時期が決まる。夏至から数えて3回目の「庚」の日が「初伏」、次の「庚」の日が「中伏」、立秋以降最初の「庚」の日が「末伏」、合わせて「三伏天」という。

漢方(中医)が生活の中に深く入っている中国ではこの時期「食」が重要視される。「医食同源」思想だ。中国は広いので、各地方で「食」の習慣は異なるが、「三伏天」の時期は暑さで体調を崩しやすいので、特に食生活には気を使わねばならないという考え方が、各地の人々の生活に沁み込んでいる。

北京など中国の北方では「入伏」時は「頭伏餃子」を食べて栄養をつける。栄養といっても高カロリーで、比較的あっさりした消化の良いものでないといけない。その点餃子は格好の食べ物なのだ。因みに中国で「餃子」と言えば水餃子で、日本で主流を成す焼き餃子は「餃子」とは呼ばない。焼き餃子は「鍋貼」という。「中伏」の時期は「三伏麺」(麺類)を食べる。「末伏」の時期は「三伏烙餅攤鶏蛋」、焼き餅と卵料理が珍重される。暑い中、多くの北京人は熱い「かき玉子入り鶏ガラスープ」を好んで飲む。玉子と鶏ガラスープは栄養があり、たくさん汗をかいて、体内の熱や湿気を排出させるという漢方の考え方だ。

気候的には猛暑到来だが、経済の冷え込みは依然根本的には解消されていない。やはり大きいのはGDPの約3割を占める不動産関連市場が一向に持ち直してこないことだ。消費も全体として低調である。経済の低迷を反映して、失業率は高止まりしている。特に若年層(16歳から24歳)の失業率は14%前後から下がらない。これらは中国にとって由々しき問題だが、日本の一部学者が言うような、今にも中国経済が崩壊するようなことはない。中国経済の当面の主な問題は、良い分野と悪い分野が存在し、バランスが大きく崩れていることだ。これは中国経済が目下転換期にあり、新たな「質の高い経済」へと脱皮する「産みの苦しみ」の時期にあるとも言える。今回のレポートは、中国経済の「良い部分」を紹介する。

先般中国政府は第2四半期のGDP成長率を発表した。第1四半期(1月―3月)は対前年同期比+5.0%だったが、第2四半期(4月―6月)はぐっと下がって同+4.3%だった。多くの経済専門家の予測が+4.5%だったので、その予測をも下回った。上半期(1月―6月)トータルでは同+4.7%で、通年の目標である「+4.5%―5.0%」をかろうじてクリアした。ただ生活実感に近い「名目GDP」は、第2四半期は+5.9%、13四半期ぶりに「名目」が「実質」を上回った。デフレ圧力はやや緩和されつつあると言えるかもしれない。ただ中東情勢の不安定化などで、輸入原油や原材料の高騰が企業収益を圧迫し、楽観は出来ない。各分野の上半期(1月―6月)の具体的数値だが、消費の動向を示す消費者物価指数(CPI)は同+1.3%で、目標の+2.0%に及ばなかった。第2四半期各月では4月+1,2%、5月+1,2%、6月+1.0%だった。固定資産投資は同-5.7%、うち不動産開発投資は同-18.0%だった。工業生産は同+5.4%、うちハイテク分野は同+13.3%で、中でも産業用ロボットは同+28.0%と大きく伸びた。なお第2四半期の各月購買者担当指数(PMI)は4月製造業50.3、非製造業49.4(総合PMI産出指数50.1)、5月同50.0、50.1(同50.5)、6月同50.3、50.2(同50.6)と50.0を上回った。輸出は同+13.4%(人民元ベース)で健闘、対米は減速を続けるものの、対EU、対ASEAN、対アフリカが伸びて、数字を押し上げた。これらの数字をどう見るかだ。確かに消費を見ると、中国経済がデフレ的状況から依然抜け出せずにいることを表しているが、悪い状況ばかりではない。

GDP成長率は、経済全体の動向を示すが、経済構造の変化を表すことが出来ない。多くの人は今の中国経済を見る場合、不動産市場、消費、失業率など、マイナス面に目が行き、「大変だ」、「崩壊する」とネガティブに考えがちだ。しかし悪い面がある反面、中国経済がハイテク分野で、目を見張るような急速な進歩を遂げていることはこれまた事実なのだ。その事を如実に表すことが最近幾つかあった。

少し前の4月19日、北京で第2回人型ロボットハーフマラソン大会が開催され、大きな話題を呼んだ。主催者によると2025年に始まったこの大会の目的は、ハイテク技術の研究、製造と実用化を促進させるもので、「中国の産業構造をハイテク中心に転換させる」一環だという。このロボハーフマラソンは、人間によるリモコンでの遠隔操作走行部門と、障害物などを避けて完全自律して走行する完全自立走行部門に分かれていた。全国11省から、高専、大学、研究所、ハイテク企業など100を超えるチームが参加した。完全自律部門の優勝は中国のスマートフォンメーカーの「栄耀終端」(HONOR)が開発した「閃電(FLASH)」だったが、記録は衝撃的なものだった。昨年の第1回大会(ハーフマラソン)の優勝タイムは2時間40分42秒だったが、今回はそのタイムを信じられないくらい更新し、50分26秒で走り切った。このタイムは人間をも抜いたと大いに話題になった。現時点の人間のハーフマラソン記録は、ウガンダのジェイコブ・キプリモ選手(男)の持つ57分20秒である。因みに第2位、第3位もHONOR社のロボットだった。この企業は通信大手の「華為(ファーウエイ)」社から独立し、ロボット製造で成功を収めた企業だ。清華大学でロボットを研究している友人は、「HONOR社は素晴らしい技術を持っているが、ロボットを研究開発している大学、研究所、企業などは万とあり、激烈な競争を展開している。今やロボット生産分野は戦国時代なのだ。そのうちの幾つかは既に大きな成果を挙げている。来年のロボマラソンでHONOR社が連覇する保証はない」と言っていた。

7月2日から韓国の仁川で「ロボカップ2026」が開催された。AI搭載ロボットが様々な分野で活躍する、その能力を競う世界最大規模の大会だ。スポーツ競技、家事サービス、レスキュー活動、生産活動など各分野での活動を競う。この大会には世界45か国から300以上のチームが参加した。大会の目玉は、ヒューマノイド大型ロボットの「サッカーW杯」だ。1チーム3台のロボットが25メートルプールの半分くらいの「サッカー場」で、前後半10分ずつでプレーする。これには韓国、中国、米国、ブラジルなど20チームほどが参加、白熱した試合が展開された。決勝に勝ち上がったのは中国・清華大学チームと、同じく中国・農業大学チームで、優勝は清華大学チームだった。残念ながら日本チームの参加はなかった。大会主催者によると、近い将来人間のW杯優勝チーム(2026年はスペイン)と試合し、勝つことを目標としているそうだ。既にチェス、将棋、囲碁では、人間はAIに勝てない。将来、サッカーなどのスポーツ競技でも、人間はAI搭載のロボットに勝てなくなるのだろうか。

この6月、中国のロボットメーカー「優必選科技(UBテック)」は、表情豊かで全身を動かせる、人間そっくりな「男女」のロボットを発表し、衝撃を与えた。家庭で家事をやり、孤独な1人暮らしの老人の相手をすることなどが出来る。もちろん会話は自由である。ついこの間まで、「将来の彼女、彼氏はロボットだ」と冗談を言い合ったものだが、このロボットを見ると、それが現実味を帯びてくる。等身大で、全身を動かすことが出来る最高級「人間型ロボット」の値段は99万元(約2400万円)だという。ロボットの専門家によると、これまでロボットと言えば動く「金属製の人形」だったが、今の人型ロボットは頭髪があり、目鼻立ちは人間と同じ、肌感触も人間に近づいていると言う。これを素晴らしいと取るか、気持ち悪いと取るか、分かれるところだろう。少なくとも若者たちにはあまり違和感はないようだ。「ロボタクシー」は中国の大都市で2、3年のうちに実現するだろう。先進国を中心に普及している家庭用掃除ロボットで、中国は世界7割のシェアを占め、寡占状態を築きつつある。価格が安いだけではない。ロボメーカーの「石頭世紀科技(ロボロック」(北京)が開発した掃除ロボ「サロス・ローバー」号は、階段を上る機能を備え、1階の掃除が終わると自力で2階に上がり作業を続ける。北京大学でロボットを研究している友人は「今は価格が安いだけでは競争に勝てない、問題は発想、技術力と実用性だ」と言っていた。

AI搭載ロボットは1つの例だが、ハイテク分野における中国の躍進速度は予想をはるかに超えている。

新車販売状況は消費動向を見る上で重要だ。中国は今やダントツの自動車大国になり、これまで新車販売は右肩上がりに増加してきた。2025年の世界新車販売ランキング(国内販売)は以下の通り。

1位中国3440万台、2位米国1659万台、3位インド561万台、4位日本456万台、5位ドイツ323万台。中国の2025年の新車販売台数は対前年比+9.4%だった。これは消費振興のため行った「買い替え補助金」が大きな追い風になったからである。ところが今年に入り、新車販売に陰りが出てきた。2026年上半期(1月―6月)の国内新車販売は対前年同期比-21%に落ち込んだ。一方で輸出は同+65%と大きく伸びた。これも1つのアンバランス現象である。それでも中国の自動車産業はEV(電気自動車)への転換が進み、EVを中心に世界販売が伸び、全体として発展を保っている。EV販売では世界の約65%を占め、EV用バッテリーでも世界の7割強を占めている。世界的にEV化の流れは止まらず、2025年は世界でEV新車2070万台が販売された。これは2010年の2800倍である。メーカー別では1位がBYD(中国)の460万台(国内販売は頭打ち気味で、対前年比-8%)、以下2位から13位は、吉利(中)、テスラ(米)、VWグループ(独)、長安(中)、SGMW(中)、奇瑞(中)、BMW(独)、零跑(中)、HIMA(中)、現代(韓)、小米(中)、メルセデス(独)で、中国のメーカーは8社。この13社の合計は1553万台で、世界の約75%を占める。国別のEV化率は北欧各国が高く、ノルウェー92%、スウェーデン58%、デンマーク56%、フィンランド50%。主要国では中国48%、ドイツ19%、米国10%、日本は3%だ。つまりまだEVの潜在需要は大きいと言うことだ。中国でEVと言えばBYD社だが、そのBYDも国内で他のメーカーから猛追されている。BYDは国内販売では壁にぶつかり、積極的な海外展開を目指す。5月、欧州自動車市場で中国の自動車シェアが初めて日本を上回った。けん引したのはBYDだ。BYDは中国国内では販売が頭打ちになっているが、海外販売では2026年上半期の海外販売が前年同期比+70%強となった。今年上半期の中国製自動車の欧州主要31か国での販売台数は13万8410台(対前年同期比+65%)で、日本車の合計13万0424台を抜いて1位となった。EUは欧州製自動車防衛のため、中国からの輸入車の関税を引き上げたが、それでも性能の向上、低価格の魅力で勢いは止まっていない。中国のEV最大手BYDはついに日本という「自動車王国」に殴り込みをかけてきた。EV化が遅れている日本の弱点をついてきたとも言える。輸入車販売大手の「ヤナセ」の販売網を通じ、BYDはこの7月から国内53店舗(逐一増加し100店舗を目指す)でEVを販売する。日本の消費者がどのような反応を示すか、興味深いところである。筆者は1958年から1967年まで北京に住んだが、当時広い道路にあまり車は走っていなかった。党や政府の幹部が乗っていたのは旧ソ連製のまるで装甲車のような頑丈な車「ジム」や「ジス」だった。その後国産の一般車「上海」、高級車「紅旗」が出来たが、乗り心地はお世辞にも快適とは言えず、技術的には日米欧にはるかに劣っていた。50-60年後の今、中国の自動車産業がここまで発展するとは誰が想像したであろうか。

ドローンは今軍民用とも大きな注目を浴びているが、中国のテクノロジー企業である「深圳大疆創新科技有限公司」(DJI)が世界シェアの7割を占め、その他の中国企業を合わせると、中国が世界の約9割を占めている。完成品だけでなく、米日欧を含め、ドローン生産には中国製の部品が不可欠なのが現状である。

ロボットをはじめ、ハイテク産業に欠かせないのは人工知能(AI)である。7月17日、上海で「世界人口知能大会」が開かれ、中国を中心とした、29ヶ国が参加する「世界AI協力機構(WAICO)」が設立された。日米欧などの西側国家は参加しなかったが、中国がAIに大きな力を入れていることが分かる。世界のAI分野でも中国は急速にAI覇権国米国を追い上げ、並びつつあると言ってもいいだろう。国内では「世界レベル」の企業が多数生まれ、激しい競争を繰り広げている。「ディープシーク」、「ムーンショットAI」、「智譜AI」、「ミニマックス」のAI4強が先頭を走り、「アリババ集団」、「ファーウエイ」、「百度」、「テンセント」、「科大訊飛」、「商湯科技」、「子馬智行」、「寒武紀」、「モメンタ」などが激しく追っている。英「フィナンシャルタイムズ」は最近「これまで中国のAIは米国の8-12ヶ月遅れと認識されてきたが、中国『ムーンショットAI』の新モデル『kimiK3』がこの認識を覆す可能性がある」と報じた。中国はAI特許数で世界の約7割を占め、AI関連論文数と共に米国を凌駕している。人材も急速に育っていて、その数では既に米国を抜いた。米国のシンクタンク「Macropolo」によるとAI人材トラッカートップクラス出身国は、中国38%、米国24%、インド10%、EU9%、韓国5%、カナダ4%、日本は残念ながら圏外である。ただ中国としては、AI人材の世界範囲での争奪戦の中、喜んでばかりはいられない状況がある。それはこれら優秀な人材が最終的にどこの国、どこの企業や研究所に就業するかである。これらトップ人材の多くは米国の大学やビッグテック企業に在籍し、研究キャリアの最終就業先はほとんどが米国なのだ。中国の優秀な人材が、最大のライバルである米国の研究所や企業に就業する。これが現実なのである。研究者、技術者の多くは、先ず研究費が豊富な国・企業を選ぶ。次は自由に研究が出来、政治や社会情勢に左右されないことを望む。近年の中国はハイテク産業振興のため、膨大な予算を組み、研究費は米国に引けを取らないと言われる。この面では、研究者や技術者にとっては魅力ある国となっている。しかし、研究や技術に政治が介入する可能性があると指摘される中国は敬遠されているのが実情である。とは言え、米国はAI分野での中国の急速な追い上げに危機感を募らせている。米国の調査会社「アーティフィシャル・アナリシス」がAIの性能を総合評価(プログラミング、数学、科学など多分野)したところ、中国の「KimiK3」は米アンソロビックの最新モデル「フェイブル」、オープンAIの「GPT―5・6」に次いで第3位に入った。米国家情報長官室は2025年の「世界脅威年次報告書」で、中国が2030年までにAI分野で米国を追いこす可能性を指摘している。ただAIの急速な進歩は、複雑な社会問題を引き起こしている。最近中国で話題となったのは「AI恋人サービス」問題だ。中国は「人工知能擬人化双方向サービス管理暫定弁法」を施行し、未成年者への仮想恋人提供サービスなどを禁止、規制を強化した。「アリババ」社などは即刻このサービス提供を停止した。SNSなどの未成年者に対する影響と規制も話題になり、議論になっている。オーストラリアでは2025年「16歳未満のSNS利用禁止法案」が施行された。EU各国でも規制強化の方向で議論が進んでいる。「ネット社会」とAIの急速な進歩はこれまで想像もしなかった問題を産み出している。「ネット社会」は今後どうなるのか、AIはどこまで進歩するのか、どこまで許容し、どこまで規制するのかは、中国だけでなく世界的な問題なのである。

数年前から始まった米中「経済戦争」の中で、米国は中国のハイテク産業振興計画の「アキレス腱」である半導体を中国「抑え込み」の有力な武器とした。米中経済戦争開始時、中国は世界最大の半導体マーケットであったが、自給率は10%程度に過ぎなかった。中国は半導体生産に不可欠なレアアースを米国に輸出、米国は中国から輸入したレアアースを使い生産した半導体を中国に輸出、中国は米国から輸入した半導体を使いスマホなどを生産し、それを世界向けに輸出していた。この分業はスムースに行われ、それぞれが恩恵に浴していた。ところが米国の対中国半導体輸出規制が始まり、中国には必要な量の半導体が入って来なくなった。通信機器大手の「華為技術有限公司(ファーウエイ)」などは大きな影響を受け、スマホなどの主力製品は大打撃を受けた。しかし数年経った今、ファーウエイなど中国の通信機器メーカーは完全に蘇った。ファーウエイ製のスマホに使われている半導体は100%国産品である。中国は国策として半導体の生産、自給率向上に取り組み、現在は米国の圧力を跳ね返すばかりでなく、輸出するほどになった。2025年の集積回路(半導体の中核)輸入額は4243億ドル、輸出額は2019億ドルである。まだ完全自立とはいかないまでも、米国の輸出規制で中国のハイテク産業が大打撃を受ける時期は既に終わった。米国半導体工業会(SIA)が発表した5月の販売額は、世界販売総額1206億1000万ドル、この内米国を含む米州428億5000万ドル(対前年同月比2.3倍)、アジア・太平洋(日中を除く)341億ドル(同2.2倍)、中国は319億7000万ドル(同+88.8%)、日本は45億8000万ドル(同+23.8%)だった。中国は技術、生産、販売両面とも米国、韓国、台湾の3強を激しく追っている。米中半導体摩擦は、今や中国政府のレアアース輸出規制で困っているのは米国である。レアアースには様々な種類があるが、平均すると中国は70%-90%のシェアを有している。レアアースがなければ、半導体生産が出来ないばかりか、戦闘機も原潜も動かない。

最近注目されだしたのはフィンテック分野での中国の躍進である。フィンテックは金融(Finance)と技術(Technology)を組み合わせ、ITを活用し、決済、送金、融資、暗号資産、資産運用などの金融サービスをより便利に、より低コスト、高効率にする仕組み。これは金融機関の次世代競争力を左右する。10年くらい前まで、この面で米国が圧倒的な覇権を握っていたが、この10年で力関係は大きく変わってきた。7月7日付「日本経済新聞」の報道によると、過去10年間に出願されたフィンテック関連の特許を見ると、中国38%、米国17%、韓国9%、日本8%だった。企業別特許出願数では、1位から10位までの中に中国企業は8社入り、米国企業は2社だった。1位から5位まで、7位から9位までが中国企業、米国企業は6位と10位だった。因みに特許出願数第1位の企業は中国の「中国工商銀行」。特許の注目度、独自性、競争力、影響力などの価値をスコア化したものでは、第1位が中国の8万7926点、第2位の米国は6万9642点、第3位の日本は2万0875点だった。因みに2015年の時点での中国のスコアは1400点台だった。企業別でも第1位は中国の「アリババ集団」だった。過去10年間で、中国は特許出願数を10倍に増やし、一気に米国を追い抜いた。金融は経済の根幹である。このままで行けば、将来中国の人民元は、貿易決済など国際通貨の面で米ドルの「1強」状態を脅かす存在になるだろう。

その他の分野、例えば風力発電の基幹設備である風車で、2025年、中国は世界シェアを79%にまで伸ばした。問題もある。技術力が高く、安価な中国製風車は各国、各企業とも大いに興味を持つが、中国製風力発電、太陽光発電設備が今後とも右肩上がりに伸びるとは限らない。それは「経済安保」、「エネルギー安保」という「政治の壁」が立ちはだかるからである。欧州では既に中国製風車導入へのブレーキがかかっている。日本でも高市政権は「エネルギー安保」の観点から、国産重視の考え方を打ち出している。

前にも述べたが、中国経済は単純に良い、悪いでは判断することは出来ない。問題は非常に悪い部分と、非常に躍進している部分が混在していて、バランスが崩れていると言うことである。この「バランスが崩れる」は、危機的な状況を産み出している面がある一方で、経済構造の転換が進みつつあることでもある。中国政府は2015年に「中国製造2025」という産業構造の転換、ハイテク化計画を打ち出したが、この計画が着々と進んでいるのも事実なのだ。この計画が実現すれば、中国経済は高次元での新たなる成長期に入る可能性がある。

今回のレポートは、中国経済の「躍進している」部分を紹介した。もちろんこれが全てではない。しつこいようだがもう一方には「非常に悪い」部分が存在する。この両面を知らないと、中国経済の実態を理解することは出来ない。

西園寺一晃 2026年7月